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GSアライアンスが、お茶殻、コーヒーかすから量子ドットを合成し、農薬としての効果を確認

GSアライアンスが、お茶殻、コーヒーかすから量子ドットを合成し、農薬としての効果を確認

脱炭素、カーボンニュートラル社会構築のための最先端技術を研究開発するGSアライアンス株式会社の森良平博士(工学)は、茶殻、コーヒーかす、廃木材などの植物バイオマス系有機廃棄物から量子を合成し、農薬、殺菌剤としての機能を持つことを確認しました。

農薬としての効果を確認した有機バイオマス系廃棄物から合成した量子ドット(紫外線照射下)

一般的に農薬には殺虫剤、殺菌剤、除草剤、忌避剤などがあります。また大きく分けると2つに分けることができ化学農薬と生物農薬に大別できます。化学農薬はその名の通り化学的に合成された物質を有効成分とする農薬です。生物農薬はハチ、テントウムシなどの天敵となる昆虫やスブチリス、チューリンゲンシスやバチルスなどの微生物農薬などです。

農薬において、作物に病害をもたらす病原に対しての殺菌剤は特に重要です。病原としては主に細菌、ウイルス、糸状菌が挙げられます。細菌は直接傷口等から細胞内に侵入し、細胞内で分裂して増殖、発病します。細菌による病害には軟腐病、青枯病やかいよう病などの病害があります。ウイルスは細胞膜を持たない数十~百nmぐらいの大きさの微粒子で、ウイルス単独では生存することができず、細胞内に入って自ら複製を作って増殖し発病原因となります。ウイルスの媒介はアブラムシやアザミウマ等が行ない、黄化えそ病やモザイク病などが知られています。糸状菌は一般にはカビと呼ばれ、作物体に胞子が付着して発芽し、細胞内に菌糸を形成して増殖し発病の原因となります。
うどんこ病、灰色かび病やなどが糸状菌により引き起こされます。

農業では作物に様々な病気が発生しますが、日本の農業病害の75%が糸状菌によって起こり、次いでウイルス、細菌、ファイトプラズマの順と言われています。よって今回の実験では、トマトを宿主とする疫病菌であるリゾクトニア・ソラニ(Phytophthora infestans)、イネの紋枯病を引き起こすリゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、そして灰色かび病の原因となる病原菌であるボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea) の3つにおいて殺菌性を試験し、合成した量子ドットの濃度にも依存しますが茶殻、コーヒーかす、廃木材から合成された量子ドット全てにおいて殺菌性を確認しました。

一般的に殺菌剤の作用する部分は、病原菌の体組織(核、細胞壁、細胞膜等)、呼吸系、もしくはそれらの原因を組み合わせた複数の作用を示す多作用点接触活性等という大きく3パターンに分けられます。細菌や糸状菌などの病原菌の体は、核酸、タンパク質、アミノ酸、脂質などの様々な成分で構成されています。これらの成分の整合性を阻害すると病原菌は正常な成長、増殖等を行うことができなくなります。2つめの呼吸系への作用ですが細菌、糸状菌も人間と同じく酸素を取り込んで糖などを酸化してエネルギーを得る方法をとっています。このプロセスは細胞内のミトコンドリアで行われているのですが、このミトコンドリア内の過程の特定の部分を阻害してエネルギーを合成できないようにするのが2つめの殺菌剤です。
他にもこれらの作用を組み合わせた場合や、酵素活動を阻害し、糸状菌においては、胞子の発芽阻止、菌糸の侵入抑制を抑制するなどの殺菌剤があり、これが3つめの殺菌剤となります。

一般に化学合成される農薬と比較して量子ドットなどのナノ材料、ナノ微粒子は、細菌との相互作用が、これらの従来の農薬より、より強くなる可能性があります。ナノ微粒子は、その数ナノメートルという超微小サイズ、及び表面の官能基の存在などの理由で菌、糸状菌の細胞壁、細胞膜により強く相互作用し、細胞内に浸透しやすいからです。細胞内に入った後は遺伝子変異や活性酸素種を生じさせ、結果として、菌を破壊する効果が抗菌性、殺菌性の原因となっていると言われています。他にも、菌の酵素の活性を阻害して、菌のペプチドグリカンの生成を阻害して、菌にダメージを与える、などの効果もあるようです。
一方で、本件のような量子ドットは、原料である廃木材、茶殻、コーヒーかすのフラボノイド、ポリフェノール、アルカロイド、カテキン、テルペノイド、サポニンなどの性質を引き継いでいる部分もあるので、それらが抗菌性、殺菌性の性質を反映している可能性もあります。さらに、田、畑などにおいて、太陽光が照射された場合は、励起電子、励起子、活性酸素種などが発生し、光触媒と類似の作用で、抗菌、抗ウイルスの効果があります。

GSアライアンスでは、以前から種々のこの量子ドットや、量子ドット複合材料を合成しており、この度、森良平博士(工学)は、廃木材、茶殻、コーヒーかすなどのバイオマス有機廃棄物から量子を合成し、農薬としての機能を持つことを確認しました。有機廃棄物から作ることが可能で、製造方法もそれほどコストもかからない合成プロセスなので、従来の農薬と比較して安価になる可能性もあります。また原料は廃棄物と言えど天然由来なので、厳密な安全性試験はこれからの課題ですが、人為的に石油から作られた化学肥料にはない安全な可能性もあります。

このように、茶殻・コーヒーかす・廃木材などの有機廃棄物、植物由来バイオマス廃棄物などから合成した量子ドット系農薬殺菌剤は、コスト面でも有利で、環境に優しい農業技術として、今後の農業に大きな貢献をすることが期待されています。また同社としては、他の有機廃棄物から量子ドットを合成し、それらの農薬としての効果も確認していく予定です。

■量子ドットとは
量子ドット(Quantum Dot)とは、量子化学、量子力学の法則に従う光学特性を持つナノスケールの超微細構造を有する最先端材料で、2023年のノーベル化学賞の対象にもなった材料です。量子ドットの大きさは通常0.5 – 9nmの直径という極端に小さい構造体で、1個あたりの原子、分子数は数十~数千個といわれており、人工原子、人工分子とも言われています。量子ドットの材料が半導体の場合は、ナノ結晶のサイズによってバンドギャップを調節することが可能であるため、粒径に依存した特徴的な発光特性を持ちます。よって粒子径サイズを変化させることにより発光波長が調整可能で、固体の蛍光体と比較してスペクトルの半値幅が狭く、量子効率も高いという特徴を持ち、かつ、幅広い波長を吸収することも可能です。

■会社概要
商号 : GSアライアンス株式会社(冨士色素株式会社グループ)
代表者 : 代表取締役 森 良平 博士(工学)
本社所在地: 〒666-0015 兵庫県川西市小花2-22-11
事業内容 : カーボンニュートラル、脱炭素、SDGs課題に取り組む環境、
エネルギー分野の最先端技術の研究開発、製造販売
URL : https://www.gsalliance.co.jp/

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プレスリリース提供元:@Press